(本ブログはPCおよび管理人が健常である限り月水金に更新されます)

さわやかに 耳に飛び込む 鶯の 谷を渡るや 軽やかな唄

水田の上をツバメが滑空しています。菜の花に代わって、けしがあぜ道に咲いています。季節は移り変わっています。いつも不思議に思うのは蛇の危機管理意識です。ヤッコさん、為体の知れないものに出くわすと、逃げるのでなく、鎌首を持ち上げてその対象を凝視します。「為体の知れないもの」の多くは自動車です。結果として、この時期、道には蛇の轢死体が横たわっています。かくして、田の害虫が増え、蛇によらず、農薬で駆除するというシナリオとなります。

+++++地上からの熱線放射・電離層応答と地震予知
 次回に続いて茨城沖地震を書くつもりでしたが、大変に興味深い記事に触れたので、それを書きます。
それは、井口和基氏のブログです。井口氏は「3月11日の巨大地震は陰謀集団による人工地震である」との説を声高に叫んでいる方です。しかし、闇雲にただ叫んでいるだけでなく、いろいろな情報をあつめ、よく勉強している節がうかがえるのですが、議論の落ち着き先がなんとも論理的でないことは、氏のブログ記事から明らかですが、この記事の目的はそれを指摘することではないので、ここでは触れません。
http://quasimoto.exblog.jp/14809625/ 
 このブログ記事は、下記の掲示板でも紹介されています。「トンデモ」の範疇に入るようで「カルト」というカテゴリに分類されています。
http://www.asyura2.com/11/cult8/msg/215.html 

 そこで、早速、元ネタを辿ってみました。
http://www.technologyreview.com/blog/arxiv/26773/ によれば、
米国NASA(National Aeronaautics Space Administration)のEarth Observation System、NASA/Goddard Space Flight Center に所属するDimitar P Ouzounov氏と氏の同僚は
Thermal Response before the Strong Earthquakes by Analyzing Multisensor Satellite Data というプロジェクトの基で人工衛星のデータの解析を通じて、大地震前の電離層での熱変化の検知を調査していました。そうしたところ衝撃的な観測事実を得たというわけです。
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この図は、説明の要も無いほどに、明瞭に巨大地震時に電離層を変化させる何かが起きていたことを示しています。

Dimitar P Ouzounov氏らは、早速この成果をEGU(European Geosciences Union)の総会で公表されるようです。その論文要旨を下に転載します:

%%%%%論文要旨転載
http://arxiv.org/abs/1105.2841 
Atmosphere-Ionosphere Response to the M9 Tohoku Earthquake Revealed by Joined Satellite and Ground Observations. Preliminary results
Authors: Dimitar Ouzounov, Sergey Pulinets, Alexey Romanov, Alexander Romanov, Konstantin Tsybulya, Dimitri Davidenko, Menas Kafatos, Patrick Taylor
(Submitted on 13 May 2011)
(ブログ管理者注:EGU総会は2011年4月3−8日開催とありますが、この論文要旨の受理は5月13日とあります。したがってこの要旨は来年の総会でのプリゼンテーション用であるのかもしれません。興味深いことは、Dimitar P Ouzounov氏をはじめとして氏の共著者が5名のロシア風名前、一人のギリシャ風名前であることです)
Abstract: The recent M9 Tohoku Japan earthquake of March 11, 2011 was the largest recorded earthquake ever to hit this nation. We retrospectively analyzed the temporal and spatial variations of four different physical parameters - outgoing long wave radiation (OLR), GPS/TEC, Low-Earth orbit tomography and critical frequency foF2.

These changes characterize the state of the atmosphere and ionosphere several days before the onset of this earthquake. Our first results show that on March 8th a rapid increase of emitted infrared radiation was observed from the satellite data and an anomaly developed near the epicenter.
The GPS/TEC data indicate an increase and variation in electron density reaching a maximum value on March 8. Starting on this day in the lower ionospheric there was also confirmed an abnormal TEC variation over the epicenter. From March 3-11 a large increase in electron concentration was recorded at all four Japanese ground based ionosondes, which return to normal after the main earthquake. We found a positive correlation between the atmospheric and ionospheric anomalies and the Tohoku earthquake. This study may lead to a better understanding of the response of the atmosphere /ionosphere to the Great Tohoku earthquake
題目: 地上・人工衛星によって明らかとなったM9東北大地震と大気―電離層間の応答:序報
要旨:
3月11日に東北日本を襲ったM9地震はこの国を買って襲った地震のうち最大であった。我々は、4つの異なる時空間の物理量を過去にさかのぼって解析した:(1)地球表面から放射される赤外線強度(OLR);(2)電離層全電子数(GPS/TEC);(3)低高度衛星軌道吸収能;(4)電磁波臨界周波数。

これらの観測量の変化は地震発生前の大気と電離層の性状を特徴づけるものである。我々が得た最初の結果は下記である:3月8日に電磁波周波数の赤外域での放射が震央域で急増したことが衛星データから観測された。
GPS/TECデータは電離層での電子密度が増加し3月8日に最大に達したことを示した。この日から電離層下部では、震央上部でTECの異常変動が始まった。3月3−11日の電子密度の急激な増加が4点での日本列島に設置されたレーダ(ionosonde)で観測されたが、その異常は地震後に正常に復した。我々は、東北地震と大気ー電離層の異常変動に正の相関があることを見出した。この研究は、巨大東北地震と大気・電離層の間の応答に関するより深い理解に我々を導くと期待する。
%%%%% 要旨紹介終わり

井口氏は、この研究調査こそが、M9東北巨大地震がHAARPによる引き起こされた人工地震であったことの証拠であると書きます。井口氏の偉いところは、この研究から上田誠也博士(東大名誉教授)−ロバート・ゲラ博士(東大教授)論争を連想したことです(上記のブログ記事参照。勉強していないと、この論争を連想することはありえません。正直驚きました:ブログ管理者注)。しかし、上田氏の研究を調査していながら、どういう論理を経て、「人工地震」という結論になるのか私には理解できないところです。
それは、ともかく、この研究はむしろ地震予知研究の新たなブレークスルーとなりえるものと私は注目した次第です。実際この衝撃的観測は、下記のHPでも紹介され、地震予知の有力な武器になるのではとの期待が表明されています。
http://thewatchers.adorraeli.com/2011/05/21/atmospheric-changes-prior-to-japan-quake-revealed/ 
ところで、井口が引用する上田氏の地震予知研究、その興味のきっかけはギリシャの地震予知、VAN,でした。
私は、2009年10月5日のブログ記事で
http://blog.livedoor.jp/oibore_oobora/archives/51302007.html
以下のように書きました:
%%%%%過去記事引用
(前略)HAARPについては、これまでも繰り返し書いてきました。HAARPが公開する地球磁場強度の変動(全磁力ではなく、平均磁場からのずれ)記録が、地球支配をもくろむ闇勢力が地震を起こしている企ての証であると、陰謀論愛好者は主張します。私は、HAARPの記録が地震に関係しているとすれば、それは、自然が地震発生を準備する過程の中で表出した現象であると考えます。つまりHAARPの記録は、自然変動の前兆的シグナルである可能性は否定しません。しかし、その変動が陰謀家による地震を起こすための操作の痕跡であるとは考えません。理由は下記です:
1980年代初頭よりギリシャの物理学者がVANなる地震予知の正当性を主張して来ました。そこでは、地電流の地震前の変化を測定するのであるが、どうみても真っ当な観測と思えます。原理は多分ピエゾ効果のようなものであろう。岩石を圧縮する際に生ずる起電力で電流が地中に流れます。VANはそれを測定していると言うわけです。電流が、つまり荷電粒子が運動すれば周囲に磁場を生じます。それは地球磁場の擾乱の一つとなりえます。それが、磁力線に沿って、極地方に伝播する事に不思議はありません。極域では、磁束密度が高いから、それなりに擾乱も増幅されるやも知れません。但し、この筋書きでは、一切の定量的考察が欠如しているので、推論の妥当性については研究者の調査に期待したいと思います。類似の原理から、串田氏のFM波観測には、物理的根拠がありそうです。
%%%%%引用終わり

 Dimitar P Ouzounov氏などによる研究は上記の私の考察と整合的です。そこで、次回、VAN地震予知とそれをめぐる論争を書きます。
(つづく)